『GPUが無いから無理』は本当か?ノートPCでローカル動画生成AIに挑戦してみた

『GPUが無いから無理』は本当か?ノートPCでローカル動画生成AIに挑戦してみた

なぜ「NVIDIA GPUなしで動画生成AI」を試そうと思ったのか

最近、AIで動画を作る方法をいろいろ調べていました。

ffmpegで画像を並べて疑似的にアニメっぽく見せる方法と、Stable Video DiffusionやAnimateDiffみたいな本格的な動画生成AIを使う方法、どっちがいいんだろうって考えてたんですよね🤔

調べていく中で見えてきたのが、「滑らかな動きを求めるなら、結局ちゃんとした動画生成AIを使う方が早い」という身も蓋もない結論でした。

ただ、世の中の動画生成AIツールって基本的にNVIDIAのGPU(CUDA)前提で作られているものが多くて、自分の手元のノートPCにはNVIDIAの専用GPUが載っていません。

「じゃあ自分の環境だと詰みなのか?」というのが気になって、実際に試してみることにしました。

この記事ではまず手持ちPCのスペックを正直に公開したうえで、実際にローカルで動画生成AIを動かしてみた結果を追記していく形にしています😊

今回使うPCのスペック

まずは検証環境として、今回使うノートPCのスペックを公開しておきます。

項目スペック
CPUIntel(R) Core(TM) Ultra 7 155H(16コア/論理プロセッサ22)
メモリ32.0GB DDR5
GPUIntel(R) Arc(TM) Graphics(内蔵GPU)

CPUやメモリだけ見ると、正直そこまで「低スペ」というわけではありません。

ただ一番のポイントは、GPUが「Intel Arc」という内蔵(統合)型グラフィックスだという点です。

タスクマネージャー上では「共有GPUメモリ 18.0GB」と表示されていましたが、これは専用のVRAM(グラフィックス専用メモリ)ではなく、通常のシステムメモリを間借りしている数値です。

NVIDIAのRTXシリーズのような専用GPU・専用VRAMを積んだPCとは、動画生成AIにとってはまったく別物の環境ということになります。

そもそも「ローカル動画生成AI」と「ffmpegの疑似アニメ化」は何が違うのか

本題に入る前に、今回検証する「ローカル動画生成AI」がそもそも何を指しているのか整理しておきます。

ComfyUIやAnimateDiff、Stable Video Diffusionといったツールは、静止画から実際に「動き」そのものをAIが生成してくれるタイプのツールです。

一方でffmpegは、あくまで用意された画像を繋いだりズーム/パンさせたりする「編集ツール」であって、動き自体を生み出すことはできません。

CUDA対応の動画生成AIツールと内蔵GPUしか持たないノートPCの対比イメージ

そして厄介なのが、この手のローカル動画生成AIツールの多くが、NVIDIAのCUDAという仕組みを前提に作られていることです。

Intel ArcのようなCUDA非対応のGPUだと、OpenVINOやDirectMLといった別の仕組みに対応したツール・設定を選ばないと、そもそも動かない可能性があります。

つまり今回の検証は、「PCのスペックが足りるか」以前に、「そもそもこの環境で動くのか」という入り口の話でもあります。

ちなみにコストの面で言うと、クラウド版の動画生成AI(Runwayなど)を使う手もありますが、こちらは生成のたびに課金が発生します。

ローカルで動かせるなら追加課金なしで試せるので、まずは手元の環境でどこまでいけるか確認する価値はあるかなと思っています。

実際に試したこと・結果

ここからは、実際にツールをインストールして動かしてみた結果を書いていきます。

まず最初に試したのは、動画編集ツールのffmpegです。zoompanというフィルタを使うと、1枚の静止画に対してゆっくりズームイン/パンさせる、いわゆる「ケンバーンズ効果」を作れます。

実際に試してみると、確かに「動画っぽいもの」はすぐできました。ただし開始フレームと終了フレームを見比べてみると、動いているのはカメラ(に見せかけたクロップ範囲)だけで、被写体自体は完全に静止したままでした。ffmpegが「既存の画素を加工するツール」であって生成AIではない以上、これは当然の結果です。

次に、このPCのIntel Arc(内蔵GPU)のまま本格的な動画生成AIをローカルで動かした場合、どのくらい時間がかかるか試算してみました。基準として、後述するGoogle Colabの無料T4(NVIDIA製、専用VRAM16GB)では「5秒・480pの動画が約10分」というデータがありました。Intel ArcはCUDAに対応しておらず、ソフトウェア側の最適化も追いついていないため、体感としてT4の10〜50倍は遅くなると見て計算すると、以下のようになります。

条件1分の動画にかかる時間の目安
T4基準約2時間
Intel Arc(10倍遅いと仮定)約20時間
Intel Arc(50倍遅いと仮定)約100時間(4日超)

この時点で、「今のPCのまま、フルローカルで実用的な動画生成をする」のは現実的ではないと判断しました。

ならば外付けGPU(eGPU)を買って専用のNVIDIA GPUを足せばいいのでは、とも考えました。幸いこのPCにはThunderbolt対応のUSB-Cポートがあり、技術的には可能です。ただしエンクロージャーとGPU本体で10〜20万円かかる計算で、クラウドの従量課金API(1本あたり実質1,000円前後になりうる、詳細は後述)と比較すると、200本近く生成して初めて元が取れる計算になります。動画生成をどのくらいの頻度で使うかまだ分からない段階でこの投資をするのは時期尚早と判断し、見送りました。

Google Colabのノートブックで動画生成AIツールを起動し、動画生成を実行している様子のイメージ

というわけで、無料で試せるGoogle Colab(Googleが無料で貸し出しているクラウドGPU環境)を使うことにしました。ブラウザから使えて、無料でNVIDIA T4 GPUが割り当てられるので、Intel Arcの壁を回避できます。

Wan2.2という動画生成AIモデルを、有志がColab用に公開しているノートブック(GitHub上のIsi-dev/Google-Colab_Notebooks)を使って動かしました。ブラウザでURLを開くだけで、面倒な環境構築コード込みでそのまま実行できます。

まず「Prepare Environment」というセルを実行して、必要なライブラリやモデル本体をダウンロードします。ここだけで実測約22分かかりました。無料枠の宿命として、ここは待つしかありません。

環境構築が終わったら、画像を1枚アップロードして、動画の長さ(フレーム数)や解像度を設定します。このノートブックはframesの上限が120(fpsは16固定なので7.5秒相当)に制限されていて、これが無料T4で安定して動く現実的な上限のようでした。

今回はデフォルトに近い設定(frames=81、480p相当)で生成してみたところ、実際に5秒の動画が出来上がりました。実際に生成された動画がこちらです。


画像1枚だけから、被写体がそれらしく動く映像が確かに出力されました。ffmpegのケンバーンズ効果とは明確に別物の結果です。

動画生成にかかる待ち時間の長さを表すイメージ

使ってみた感想・考察

実際に試してみて感じたことを、正直に書いておきます。

正直、「無料でここまでできるのか」という驚きはありました。ffmpegのケンバーンズ効果とは明確に別次元の、被写体自体が動く映像が実際に手元に生成されたのは、想像以上のインパクトでした。

一方で、実用面ではいくつか引っかかる点もありました。

まず時間です。環境構築だけで22分、そこから生成にもさらに数分〜数十分かかるので、「思い立ってサッと1本作る」用途には向きません。

次に気になったのがセキュリティです。Colabは他人が書いたノートブックのコードをそのまま実行する形になるので、最初は「これって危なくないのか」と不安になりました。調べてみると、実行は自分のGoogleアカウントに割り当てられた使い捨ての仮想マシン上で行われ、セッションが終われば消える仕組みだと分かり、Googleドライブ連携さえしなければ実害の範囲はかなり限定的だと理解できました。とはいえ、身に覚えのない権限要求(ドライブ連携など)には安易に応じない、という基本は徹底した方がよさそうです。

そして一番大きかったのが、「自動化」には向かないという点です。今回の目的はSNS投稿用の動画を、このブログのように定期的に自動生成することだったのですが、Colabの無料枠は人が画面を開いて操作する前提の仕組みで、外部から定期的に呼び出して無人で回す、という使い方には対応していません。

本気で自動化するなら、Replicateやfal.aiのようなAPI型のサービスが向いています。実際に調べてみると、Wan2.2は安いプランなら1秒0.6円程度〜のものもあり、480pの動画1本(5秒)なら数円〜数十円で済む計算でした。

ただし、AI動画生成は「1回で狙い通りの結果になる」ことの方が少なく、実際には3〜5回はやり直す前提で考える必要があります。これを踏まえると、1本あたり実質1,000円前後になる可能性が高く、月に何本も作るとなると馬鹿にならない金額になってきます。

まとめ

今回の検証で分かったのは、「GPUが無いから無理」は半分正しく半分間違っている、ということでした。

完全無料・完全ローカル・完全自動という3条件を同時に満たすのは、今のIntel Arc搭載PCでは現実的ではありません。ffmpegはあくまで動画編集ツールであって動きは生み出せず、本格的な動画生成AIをローカルで動かすには、少なくとも数十時間〜のレベルの覚悟が必要でした。

一方で、「無料」「動く」だけなら答えはあります。Google Colabの無料T4を使えば、実際に5秒の動画を生成するところまで確認できました。ただし待ち時間は長く、対話的な操作が前提なので、SNS投稿の自動化パイプラインには組み込めません。

「自動化」まで求めるなら、有料のAPI型サービスが現実的な選択肢になりますが、リトライ込みで1本1,000円前後という試算になり、月々の運用コストとして無視できない金額になります。

というわけで、現時点での結論は「動画は当面、必要な分だけ手動で作る」です。もしSNS投稿でちゃんと動画の効果が見えてきて、月に何十本も必要になるタイミングが来たら、改めてAPI型サービスやeGPU投資を再検討しようと思います。

もしNVIDIA GPUなしのPCで同じように試してみたい人がいたら、参考になれば嬉しいです😊

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